鹿島槍ヶ岳 2017.11.12



鹿島槍ヶ岳にやってきた。

払暁の空に鹿島槍ヶ岳が浮かんでいた。

薄っすら赤みを帯びていた。

薄紅色のかわいい君のね~
果てない夢がちゃんと
届きますよに~


そんな鼻唄がこぼれてしまった。

本日のコースは結構長い。

薄紅色の頂上部を美しいと思う気持ち。

遠くに見える頂上に「届きますように」という祈り。

いろんな気持ちがこもったハナミズキなのであった。

5:55、大谷原出発。

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まずは林道を進んだ。

ハナミズキを唄いながら進んだ。

空を押し上げて~
手を伸ばす君 五月のこと
どうか来てほしい~
水際まで来てほしい~


「どうか来てほしい」の歌詞から、或る想い出が蘇った。

以前ここを歩いた時、「怖いので一緒に降りてくれませんか」とお願いされてからの出来事だ。

林道歩きの間、そのことを想った。

長い話になる。

が、100年は続かないので回想を書きたい。

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8年前の9月のこと




その人には、赤岩尾根と頂上稜線分岐の冷乗越で同行を依頼された。

了解したものの、ハナミズキの「僕」ほどの思いやりがない寝太郎。

マイペースでスタスタ先導した。

怖いと思っている道を、寝太郎のペースで下らざるを得なかったその人。

とても無理をして歩いたのだろう。

途中で靴擦れになってしまった。

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当時の冷乗越




一気にペースが落ちた。

相手が薄紅色の可愛い君なら、「靴擦れさせてゴメンね」と謝るだろう。

そして、薄紅色の患部を治療してあげるだろう。

ひょっとしたら、負ぶって降るかもしれない。

しかしである。

相手は薄紅色ならぬ薄毛頭のおじさんなのだった。

どうぞ行きなさい~
お先に行きなさい~


おじさんが、そう言ってくれることを寝太郎は期待した。

しかしおじさんは「待ってー、待ってー」というばかり。

寝太郎を逃がしてくれなかった。

仕方なく、寝太郎はペースを合わせた。

僕とおじさんの下山が100年続く懸念すらある激おそペースだ。

しかし僕の我慢はいつか実を結ぶだろう。

そんな気持ちで超ゆっくり降りた。



そして、ようやく林道へ辿り着いた。

やっとおじさんは言ってくれた。

「じゃあここで。どうもありがとう。」と

僕の我慢がやっと実を結んだ訳だ。

何故か彼が藪の中へ消えて行くのを見守り、寝太郎は林道をサッサカ下り始めた。

どうしておじさんは藪に入って行ったのかな。

はは~ん、藪に雉撃ちに行ったな。

おじさんの我慢も今まさに実を結んでいるんだろう。

そんな小汚い想像をしていた寝太郎の横を、さわやかな一陣の風が通り抜けた。

と思ったら、それは自転車に乗ったおじさんだった。

「待たんか、ワレェ」の「ま」も言えぬ間に、おじさんは寝太郎の視界から消えた。

その後寝太郎は、長い林道をほろりほろり一人ぼっちで帰ったのであった。

今、その林道を寝太郎は歩いている訳だ。

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無視して、とっとと下れば良かったよ…




8年前の実話である。

いまや寝太郎自身が「薄毛のおじさん」だ。

当時の脚力はもうない。

なので寝太郎は、今回自転車を持ってきた。

この長いコースを征するため、おじさんの技を盗んだのである。

おじさんへの貢献度を考えれば許されるだろう。



6:55、林道終点通過。

ここから登山道となる。

前回のおじさんは、ガレ場のトラバースと、沢山の急なハシゴが怖かったと言っていた。

寝太郎はこのコースには怖いと思う箇所はなかった。

しかし、今回は雪がある。

ちょっと不安も抱きつつ山道に入った。

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急なハシゴ場を進んだ。

雪が付いていてよく滑る。

確かに危ない。

おじさんの気持ちが、今になって少し分かる気がした。

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8:42、高千穂平到着。

もう一面雪である。

ここでアイゼンを履いた。

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このあたりまでは急登だが、危ないガレ場はなかった。

「あのおじさんが怖さを感じたガレ場はどこなのかな?」

そんなことを考えつつ進んだ。

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赤岩尾根の最後の部分が、おじさんが恐怖したガレ場と思われた。

かなり怖かった。

なぜ8年前は怖くなかったのだろう。

一歩一歩足場を固めて慎重に進み、冷乗越に辿り着いた。

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黄色の矢印部が特に怖かったです。




11:14、冷乗越到着。

剱・立山が姿を現し、眺望は360度。

汗をかいた身体にちょうどいい風も吹いている。

「最高!」と叫びたいところだ。

しかし、予定時間を大幅オーバーしている。

「さぁ、行こう!」と呟き鹿島槍に向かった。

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11:33、冷池山荘到着。

「稜線は風で雪が飛んでて歩きやすいだろう。」

そう期待して、尾根登りを頑張ってきた。

しかし、期待に反し雪が結構あった。

スピードが上がらない。

少し荷物を置いて、スピードアップを目論んだ。

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稜線に出た後に広がった、剱・立山方面の眺めは良かった。

深い黒部谷には、静雲が満ちていた。

雲海というより、白いダム湖のようである。

「じゃあこれって、雲海じゃなくて雲湖?」

そんなアホなことを考えつつも、クソぢからを出して進んだ。

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稜線はなだらかだったが、その分吹溜まりが多かった。

体力も時間もどんどん消耗するが、鹿島槍はなかなか近づいてこない。

そして小さな丘を越えると、ラッセルがきつそうな長~い雪原が広がっていた。

槍は~ 遠すぎて~
僕の足取りは重すぎて~
山頂に向かったら~
きっと夕陽が沈んじゃう~


11:57、ここでギブアップ。

僕の我慢は実を結ばなかった。

残念!

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稜線のラッセルは一青窈というか一徒労というか一苦労であった。

しかし、足跡のおかげで帰りはラッセル不要だ。

ここに僕の我慢が実を結んでいると言えなくもない。

そう自分を慰めて、撤退路を進んだ。

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冷池のテン場で昼ご飯。

行動中は暑かったが、休むと寒かった。

なので暖かいカップめんが超美味かった。

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カップ麺のおかずは剱・立山の眺め。

こんな豪華なおかずはない。

美味くない訳がないのだ。

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しかし、それ以上に美味く感じる。

普段よりとろみと塩加減が絶妙なのだ。

なぜだろう?

食べてる途中で旨みの素が分かった。

我が THE NOSE FACE からカップ麺に、黄金の出汁が滔々と注がれていたのだ。

ぉええっ!
いやぁぁ!
僕からもらい泣き!


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寒冷地で熱いものを食べると鼻水が流れる私




昼食後、本格撤退。

黒部の谷の雲を雲湖とディスったからであろうか。

もくもくと怒ったようにガスが沸きあがってきた。

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冷乗越から赤岩尾根へ降った。

一般に難所は登りより降りの方が危険である。

登りで恐怖した難所は大丈夫か心配になった。

誰か一緒に降ってくれないかなぁ。

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うそ。寝太郎は一人が好きです。




下り始めると谷底に人影が見えた。

と思ったが、それはブロッケンで自分自身であった。

誰にも頼らず一人で降るのだ。

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右下の光の環がブロッケン




しかし、危なげなく降れた。

登りで刻んだステップがあったからだ。

ありがとう、登りの自分!

頼りになるやつだ。

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14:27、高千穂平到着。

再々度ガスに覆われた。

ガスがかかり始めたのではなく、自ら雲の層の高さに突入したようだ。

雲高に入った訳だ。

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雲高を抜けると、山麓が見えてきた。

もうすこしで、林道に出る。

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15:44、林道終点到着。

後は林道を自転車で下るのみだ。

朝に登ってきた時、林道には凍結箇所があった。

そこでコケないように気をつけよう。

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と思ったが、その必要はなかった。

昼間の日差しで氷は解けていた。

融水が流れる路面を豪快にダウンヒル。

途中、サルの群れと遭遇した。

飛沫を上げて爆走する寝太郎に恐れをなしたのだろう。

雲子を散らすようにサルたちは逃げた。

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飛沫は寝太郎自身にも多大な被害をもたらした。

狂ったウォシュレットが汚水を撒き散らしたかのように、寝太郎の股間は泥まみれ。

終盤、う○こ・う○こと連呼しすぎたバチが当たったようだ。

しかし、綺麗な雪山と爽快なダウンヒルで大満足の一日であった。

さらに頂上に立てたら言うことなかった。

が、楽しみはまたの機会にとっておこう。

真っ黒なマタでそう思った寝太郎であった。

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16:02、大谷原駐車場帰還



この記事へのコメント

風来坊
2017年11月14日 02:23
寝太郎さん、おはようございます。
11/1に三ツ峠山から周囲を見た時に富士山にはほとんど雪が無かったのに、北アルプスだけは白くなっており、日本海が近いので降雪量も多いのだなと思いました。あれから10日以上経過していますので、積雪量も多かったことと思います。
長野で16時と言えばもう暗くなり始める頃ですので、気を付けて下さいませ。
でも、九州では経験できない雪山歩きですので、気を付けて満喫して下さいませ。
2017年11月14日 12:43
風来坊さま、こんにちは。
のyamapの先週の記事ではラッセル不要っぽかったのですが、読みが甘かったです。
経度の関係か、確かに九州より日暮れが早いので、時間感覚を修正しないとマズいです。
昔、雪の焼岳で日没後の彷徨を経験したのてすが、その時はココロも真っ暗になりました。あの思いは二度と味わいたくないので、今後も気をつけます。
けいこたん
2017年11月14日 22:37
まじめにコメントしようと思いましたのに…。
前々回の記事から、カッコいいスーツ姿想像していましたのに…「はなみずき」にボッコリやられました。(*_*;
高山の記事もそうですが、今回の鹿島槍ヶ岳、そしてこれからの山々は一つ一つの写真に興奮しそうです。知らない山を身近に見せていただける気がして楽しみです。


2017年11月15日 07:39
けいこたん、おはようございます。
花より景色が好きな寝太郎ですので、眺望の写真はこれからもご覧頂けると思います。しかし、花より眺望よりおふざけが好きでもありますので、そうした意味不明な文章と写真にもお付き合い頂けると幸いです。

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